若手社会人のための「深掘り質問」実践ガイド:相手の考えを引き出す対話術
入社間もない頃、ビジネスシーンでのコミュニケーションに戸惑いを感じることは少なくありません。特に、上司や先輩、あるいは取引先との対話において、「何を質問すればよいのか分からない」「質問しても相手の真意が掴めない」といった悩みを抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
曖昧なまま物事を進めてしまい、後から認識のずれに気づく経験は、誰しもが避けたいものです。このような状況を打開し、より深い相互理解へと導くのが「深掘り質問」です。本記事では、若手社会人が日々の業務で自信を持って対話し、相手の本音や真意を引き出すための深掘り質問の型と、それを効果的に実践するための心構えについて解説します。
深掘り質問が「相手の本音」を引き出す理由
深掘り質問とは、単なる事実確認に留まらず、相手の思考プロセス、感情、背景にある意図に焦点を当てて問いかける質問の手法です。これにより、表面的な情報だけでなく、その奥に隠された「本音」や「真意」を引き出すことが可能になります。
このような質問は、相手に自身の考えを改めて整理し、言語化する機会を提供します。質問された側は、なぜそう考えるのか、何が重要なのかを内省することで、発言がより具体的かつ明確になる傾向があります。結果として、質問者と回答者の間で共通認識が深まり、誤解や認識のずれが減少し、より建設的な対話へと繋がっていくと考えられます。
【場面別】相手の考えを引き出す「深掘り質問」の型と具体例
ここでは、若手社会人が日常的に直面しやすいビジネスシーンを想定し、具体的な深掘り質問の型と、その言い回しをご紹介します。
1. 上司や先輩への「相談・報告」時
指示の背景や意図、優先順位が不明瞭な場合、具体的な質問を通じて明確化することが重要です。
- 型: 「〜について、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか」
- 具体例:
- 「このプロジェクトの方向性について、特にどのような点を重視されていますか?」
- 「以前お話しいただいた〇〇の件ですが、具体的にどのような経緯でその判断に至ったのでしょうか?」
- 「私の提案のどこに懸念を感じられましたか?具体的に改善すべき点をお教えいただけますと幸いです。」
- 「現状の課題に対し、〇〇部長はどのようなアプローチが最も効果的だとお考えですか?」
2. 会議や打ち合わせでの「意見交換」時
相手の発言の真意、潜在的なニーズ、あるいは具体的な懸念事項を引き出すために有効です。
- 型: 「〜とおっしゃいましたが、それは具体的にどういうことでしょうか?」
- 具体例:
- 「〇〇さんのご提案、大変興味深いのですが、そのメリットをもう少し具体的にご説明いただけますか?」
- 「その課題に対して、これまでにどのような対策を検討されましたか?その結果はいかがでしたでしょうか?」
- 「もし現在の制約がなければ、どのようなアプローチが考えられますでしょうか?」
- 「『顧客満足度を高める』という目標に対し、具体的にどのような行動が最も重要だとお考えですか?」
3. フィードバックや評価を受ける際
自身の成長に繋がる具体的な改善点や、期待される役割を明確にするために役立ちます。
- 型: 「〜とのことですが、具体的にはどの部分を改善すべきでしょうか?」
- 具体例:
- 「私の業務に関して『もっと主体的に』というフィードバックを頂きましたが、具体的にはどのような行動を期待されていますでしょうか?」
- 「〇〇の件で課題があるとご指摘いただきましたが、他に何か私が改善できる点はございますか?」
- 「今後、私がどのようなスキルを伸ばしていくと、チームへの貢献度が高まるとお考えでしょうか?」
- 「私の強みである〇〇を活かすために、今後どのような業務に挑戦すると良いでしょうか?」
深掘り質問を効果的に行うための心構えと姿勢
質問のテクニックだけでなく、それを支える心構えと姿勢が、相手の本音を引き出す上で不可欠です。
1. 相手への敬意と傾聴の姿勢
質問は相手を問い詰めるためではなく、理解を深めるための行為です。相手が安心して話せる雰囲気を作り、敬意を持って耳を傾けることが重要です。相手の言葉を最後まで聞き、途中で遮らないように心がけましょう。
2. 完璧な質問よりも「聴く」ことに注力する
「気の利いた質問をしなければ」と気負いすぎる必要はありません。完璧な質問をすることよりも、相手の言葉を真摯に受け止め、そこから次の質問のヒントを見つけ出すことの方が重要です。相手の言葉の端々に隠された感情や考えに意識を向けることで、自然と適切な深掘り質問が生まれることがあります。
3. 相手の「非言語サイン」を読み取る
言葉だけでなく、相手の表情、声のトーン、しぐさなども、本音を読み解く重要な手がかりとなります。相手が話す内容と非言語サインに矛盾がないか、あるいは非言語サインが何を物語っているのかに注意を払うことで、より深い理解に繋がるでしょう。また、相手が考えるために沈黙する時間を尊重することも大切です。
まとめ:質問は信頼を育み、自信へと繋がる道
深掘り質問は、表面的な会話を超えて、相手の本音や真意に迫る強力なツールです。これにより、業務における相互理解が深まり、課題解決の精度が向上するだけでなく、質問者自身の信頼性も高まります。
完璧な質問を一度にマスターしようとするのではなく、日々の対話の中で少しずつ、ご紹介した質問の型や心構えを試してみることをおすすめします。質問を通じて相手の考えを深く理解し、自身のコミュニケーションスキルを高める経験は、やがて確かな自信へと繋がり、あなたのビジネスキャリアを豊かにするでしょう。